「いのちの村」の出発点~ 木の花ファミリー

 「いのちの村」は、ゼロからの試みではありません。ロールモデルであり、出発点となる営みがあります。それが、富士山のふもと、静岡県富士宮市にある木の花(このはな)ファミリーの暮らしです。 木の花ファミリーは、「いのちの村」の出発点であると同時に、「いのちの村」に加わる最初の団体となります。 

 木の花ファミリーは、生きていくための営みが環境を汚していく矛盾に心を痛めた有志たちが、1994年に富士山のふもとに移り住んで始めた共同体です。なにひとつ土台のないところから自給自足を目指した農業を営み始め、現在は12種類の米、200種類を超える野菜や穀物を、化学肥料や農薬を一切使用しない自然農法で育てています。自然卵やヤギのミルク、はちみつ、伝統製法でつくるしょうゆや味噌、そしてさまざまな加工品に至るまで、油や砂糖などをのぞくほとんどの食材を自給しています。

 14世帯46人が血縁を超えた大家族として暮らすファミリーの人々は、家財や家計、農地や農機具、施設を共有して、それぞれが自分にもっともあった役割を自然に分担して働いています。田畑や養鶏、ヤギの飼育、炊事や掃除、洗濯、配送の手配や訪問者の対応、そして経理やホームページの管理といった事務作業にいたるまで、その役割はすべて平等です。家事を担当する女性たちが田畑で働くお母さんに代わって子育てをし、年長の子供たちが年下の子供たちの面倒を見ることがあたりまえに行われている日常は、現代社会では血縁の中でさえ失われつつある、助け合い、支えあう家族の生活を表しています。

 ファミリーの食卓には旬の野菜をふんだんに使った自然な食べ物が彩り豊かに並び、一同に会した大家族がそれを囲みます。自然の恵みに感謝する祈りとともに始まる食事風景は、本来あるべき食の姿を見せてくれます。

 ファミリーでは、多くの人々の訪問や滞在を受け入れています。中でも心や体の調子を崩したり、生活が行き詰まったりした人々に対しては、独自の「自然療法」を提供しています。自然に沿った生活の中で自らの心身を癒し、大家族の暖かなまなざしの中でそれまでの自分の生活や心をあらためて振り返る中で、多くの人が薬や高価な療法に頼ることなく、自らの元気を取り戻してゆきます。

 血縁を超えた人々が、特定のイデオロギーや宗派といった枠に縛られることなく、穏やかな調和を保った生活。世間と一線と画すライフスタイルを持ちながら、訪れた人々との交わりを大切にし、地域社会にも積極的に参加する開放的な暮らし。すべての役割が平等で、それぞれがその人にあった仕事を落ち着いてこなす労働生活。有機農業によって達成された高いレベルの食糧自給。自然との調和を大切にし、環境に最大限に配慮しつつ、文明を否定することなく、その利点は生かしてゆくバランスの取れた視点。心身の病気などの困難に出会った人を分け隔てなく受け入れ、無償で復帰への後押しをするなど、社会貢献への強い意志・・・。

 こうした取り組みは、すべて「いのちの村」のモデルとなるものです。しかし、ファミリーの人々は、実はあらかじめこうした生活を思い描いていたのではないと言います。ファミリーの人々は、世界中のさまざまな問題は、すべて人の心の反映であると考え、日常の生活の中で、自分のことのように他人を思う心、個人のエゴを超えて世界全体に調和する心を大切に育ててきました。明確に確立されたライフスタイルは、すべてその心が結実し、具体化したものであるといいます。

 私たちもまた、あらかじめデザインされたライフスタイルやシステムを具体化するのではなく、すべての人の日常に調和の心が深く根を張り、豊かな枝葉を広げていくという目的に向けて、すべてを学びとしながら、一歩一歩「いのちの村」を作り上げていきたいと考えています。

 なお、木の花ファミリーの生活と経済についてもっと詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。